医療情報男の日記

病院で医療情報システムの保守運用の仕事をしています。

ジョン・ウィンダム著「トリフィド時代」読了

最近は、医療でもITでもなく、ただの読書感想文ばかりになってます・・・

 

 

1951年初版の、SFホラー小説です。

70年も前の作品ですが、割と最近に日本語訳の新刊が発行されています。

 

SFといっても、宇宙人やUFO、超能力者などは出てきません。新種の植物が人間を襲うだけの話。

これだけだと全然怖くないのですが、この小説では、世界中のほとんどの人類が突然盲目になってしまい、パニック状態になったところから始まります。そんなパニック状態から、例の新種の植物「トリフィド」が、人間を襲い始めます。このトリフィドは、なんと3本足で歩行可能、3メートルほどの触手を持ち、その先端にある猛毒で打たれた人間はほぼ即死という恐ろしい生物。人類が目の見えるときから生息していたこのトリフィド、当時は食用植物油脂の採取のために農園に閉じ込められていました。たまに野良トリフィドがうろついていたとしても、銃などで簡単に駆除ができました。

 

この小説の面白いところは、目や嗅覚もなく辛うじて聴覚だけがあるトリフィドが平時では全く脅威ではなかったのに、人類が盲目になってハンデを追い、農園から脱走したトリフィド達が繁殖して数を増やしたことで、絶妙なパワーバランスが形成されるところです。街を徘徊する人々に、音もなく近づき、長いムチで襲いかかるトリフィド。しかも殺した人間の前に数日とどまり、肉が腐ったところで、なんとそれを食べるという・・・。

 

運良く盲目にならなかった主人公が、同じく目が見える人たちと、グループを組んだり、逆に抗争したりと、ゾンビものでよくある「本当に怖いのは実は同じ人間」という展開もあります。この作品、SFものというよりゾンビものといった方が近いかもしれません。

 

70年経った今の時代でも、全く違和感なく楽しめる内容でした。実際、海外では映画になったり、ドラマ化されたりと、相当人気があるようですね。