医療情報男の日記

病院で医療情報システムの保守運用の仕事をしています。

病院システム保守運用担当に転職するとき有利な資格

基本情報技術者試験合格証書


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本日、IPAより基本情報技術者合格証書が届きました。 これで、医療情報技師、診療情報管理士、基本情報技術者の3つが揃いました。 この3つを取得しようと思い立ったのは2007年の春。実に9年かけてコンプリートしたわけです。

医療情報技師は2009年(5年後に失効となり2015年に再取得)、診療情報管理士は2010年、そして基本情報技術者は2016年。


未経験からの転職


僕は今の病院システム保守運用の仕事をする前は、別の医療関係の仕事をしていました。 2007年当時25歳だった僕は、「病院システム保守運用の仕事に転職したい。そのためにはまず資格をとらねば!」と思い至り、上記の3つの資格取得に向け勉強を始めました。


紆余屈折ありましたが、2014年、33歳のときに、ようやく今の仕事に就くことができました。

実は、病院システム保守運用の仕事は、特になにも資格がなくても出来ます。 しかし、実際には、募集要項の欄に「医療情報技師」、「基本情報技術者」の文字が含まれていることが多いのです。

特に未経験者がこの仕事に転職しようとするのなら、最低でも上記3つの資格のいずれかを取得していないと、かなり厳しいのではないでしょうか。

そしてこの3つの資格についてですが、実際に病院現場に入ってみると、それぞれの資格の格付けというか、ポジションがどうなっているかが良く分かりました。

今回は、院内システム担当者、もしくは医療系ベンダーSEに転職する際に、この3つの資格がなぜ有利なのかを述べていきます。


資格ランキング


この3つの資格で転職するとしたら、やはり有利な順で並べると
① 医療情報技師
② 基本情報技術者
③ 診療情報管理士
という順になるでしょう。

では、それぞれの資格の詳細について述べます。


医療情報技師


国家資格or民間資格 : 民間資格
難易度 : ★★☆☆☆
受験資格 : なし
受験時期 : 毎年8月に1回
試験内容 : 医学医療・医療情報システム・情報処理の3項目。3項目すべて合格しないと資格認定されない。
受験費用 : 15,000円(消費税込)
合格率 : 33%

jami.jp


まずはこの資格をとりましょう。受験資格はありませんし、合格率も比較的高いです。
求人広告では、この資格が応募条件であったり、必須ではなくても「取得していることが望ましい」などの文言が加えられていたりすることが多いです。
この資格を取得することで、「システムと医療の両方の知識が備わっている」という証明になります。
医療業界においては、「まず資格ありき」という意識が根強くあります。
医師や薬剤師など、国家資格は有名ですが、この医療情報技師、民間資格ながら、知名度は決して低くはなく、ネームバリューがあります。
医療現場では、システムのことに精通した人材がまだまだ少なく、この資格を持っている院内SEは、現場で重宝されることでしょう。
逆に、医療ベンダーSEがこの資格を持っていることで、お客さんである医療機関に対して、「医療の知識もありますよ!」というアピールができます。
このように、院内SE、医療ベンダーSE、どちらにもメリットがあるのです。

ただ注意が必要なのが、受験科目のルールです。3科目のうち、不合格だった科目は、翌年に再受験する必要があります。猶予期間は2年ですので、もし再々受験(3回めの受験)で不合格だった場合、猶予失効となり、次の受験でまた3科目とも受験しなおさなければならないのです。不合格科目があった場合は、なんとしても翌年、最悪でも翌々年の受験で合格しておきたいところです。


基本情報技術者


国家資格or民間資格 : 国家資格
難易度 : ★★★☆☆
受験資格 : なし
受験時期 : 毎年4月、10月
試験内容 : 情報処理全般、ストラテジ系、マネジメント系、アルゴリズム、プログラミングなど
受験費用 : 5,700円(消費税込)
合格率 : 25%

www.jitec.ipa.go.jp

IT業界においては、もっとも人気のある資格のうちのひとつです。
医療業界だと、ガクンと知名度が落ちてしまいます。
しかし、医療系ベンダーSEを目指すなら、医療情報技師よりも優先順位が高いといえます。
逆に院内SEを目指すなら、二の次、三の次、くらいの意識でよいと思います。(実際、配属先のシステム課6人のうち、基本情報技術者持ちは僕だけです・・・)

基本情報技術者の大きなアドバンテージとしては、「国家資格であること」です。

医療情報システムの保守運用の業務をアウトソーシングしている病院が多く、特に大規模病院ではその傾向が強いです。 そういった業務をどこの企業に任せるか。多くは入札によって決められます。その入札の際、この基本情報技術者をはじめとした「情報処理技術者試験」の有資格者が多いことが有利に働きます。

病院から業務委託を受けて社員を出向させている企業は少なくありません。(今の僕が所属している会社もそうです)
病院常駐型の院内SEとして働くなら、持っておいて損はありません。


診療情報管理士


国家資格or民間資格 : 民間資格
難易度 : ★★★★☆
受験資格 :
(1)一般社団法人日本病院会診療情報管理士通信教育を修了した者
(2)一般社団法人日本病院会指定大学および指定専門学校で指定単位を修得し、卒業した者
診療情報管理士通信教育応募資格 :  
原則として2年制以上の短期大学または専門学校卒以上の学歴を有する者。
ただし、現在、病院に勤務している者は、当分の間、高卒者でもよい。 このうち一部病院勤務者でない者は病院実習を必要とする場合がある。
受験時期 : 毎年2月
試験内容 : 臨床医学、医療統計学、国際疾病分類概論など
受験費用 : 10,000 円(消費税込)

www.jha-e.com

難易度の高さを★4つとしたのには、2つの理由があります。

ペーパーテストが難しすぎるわけではありません。そのペーパーテストを受験するために要する費用の高さと時間の長さが、ハードルを上げているのです。


①費用が高い

まず、日本病院会による通信教育を受講することになります。この受講料、2年間でなんと20万円(税込)・・・。


②資格取得までに最低でも2年を要する(専門養成校除く)

この通信教育は、2年間のうちに基礎課程24単位、専門課程24単位の修得が必要です。
その2年間のうちに、リポート提出、通算6日のスクーリング(対面授業)、各期末試験の合格など、必須条件をクリアして、ようやく診療情報管理士認定試験が受験できます。
しかもこの認定試験、年に1回しかありません。
もし認定試験に不合格となると、また翌年の2月に受験しなければなりません。


2年間の通信教育、そして20万円+スクーリング会場での宿泊費数万円+受験料1万円+認定料3万円・・・。
会社や病院が費用を補助してくれることが多いと思いますが、もし完全に自力で取得しようとするなら、相当な負担を負うこととなります。

しかし、中規模・大規模病院では、1名以上の診療情報管理士が常駐しているケースがほとんどです。カルテや診療記録管理、カルテ監査、サマリー管理、がん登録、ICD-10コーディングなど、重要な役割を担っており、院内での認知度は高いと思います。
今回の3つの資格のなかでは、もっとも「病院ウケが良い」資格と言えます。
これさえあれば、「医療のこと、病院業務のことは分かりますよ」とアピールできるからです。


まとめ


もし未経験者がこの業界に転職するのであれば、ひとまず医療情報技師は持っておきたいところです。
基本情報技術者、診療情報管理士は、それぞれ「情報処理」「医療」に特化していますが、医療情報技師は、それらの中間に位置づけられており、「情報処理も医療も両方理解している人材」という、いいとこ取りな資格なのです。
しかし、実際に転職するにあたっては、資格も大事ですが、経験、一般教養、ヒューマンスキルなど、別の要素が決め手になることも少なくありません。

病院システム保守運用の仕事は、今後も需要は増えていくと思います。
もしこの業界を目指している方がいらっしゃったら、この記事を軽く参考にしていただければ幸いです。

医療情報 第5版 医療情報システム編

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